E:環境


気候変動への取り組み

人・夢・技術グループ カーボンニュートラル宣言


人・夢・技術グループは、2050年カーボンニュートラルを目指します。


自然災害が激甚化する中で、気候変動問題へ対応が社会の喫緊の課題となっています。将来に亘る社会の持続的な発展のために、様々な主体の連携と協調によるカーボンニュートラル社会の実現への取り組みが求められます。

国内の温室効果ガス排出量の概ね3分の2がインフラ関連とされています。建設コンサルタント業を主とする当社グループは、持続可能な社会の実現において、社会インフラの調査・設計・維持管理など事業を通して気候変動への対応を担う責任があると再認識するとともに、気候変動問題への対応を当社グループの持続可能な成長のための重要な経営課題の一つと捉え、温室効果ガス排出量削減目標とその実現に向けた戦略を策定しました。

当社グループは自社の事業活動を通して、また社員一人ひとりが環境負荷低減に取り組むとともに、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて行動してまいります。


2023年9月27日



TCFD提言に沿った情報開示(Information Disclosure in Line with TCFD Recommendations)


人・夢・技術グループは、2023年1月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。TCFD提言は、世界共通の比較可能な気候関連情報開示の枠組みであり、すべての企業に対し、4つの開示推奨項目である「ガバナンス」「戦略」「指標と目標」「リスク管理」に沿って開示することを推奨しています。



ガバナンス

サステナビリティ関連の課題対応を推進するため、代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置し年2回開催します。
「サステナビリティ委員会」では、気候変動対応に関する課題や対応方針等を検討・協議し、取締役会へ報告・提言します。
取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、重要事項を審議・決定します。


■体制図


戦略

1.シナリオ分析の概要

人・夢・技術グループの主要7社(人・夢・技術グループ、長大、基礎地盤コンサルタンツ、長大テック、順風路、エフェクト、ピーシーレールウェイコンサルタント)の事業を対象として、気候変動や地球温暖化による事業環境の変化を想定し、当社グループの事業や経営に与える影響を定性的に分析・評価しました。
分析においては複数のシナリオを適用し、想定される事業や経営への「リスク」「機会」と対応方針を整理しました。


気候変動から受ける事業や経営上の「リスク」と「機会」の分析のため参照したシナリオは以下の通りです。
【2℃未満シナリオ】
温室効果ガス排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、今世紀末までの世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃~2℃未満に抑える。温暖化抑止に向けて大胆な政策や技術革新が進められ脱炭素社会への移行に伴う法規制や社会的要請への対応を迫られるシナリオ、(IEA(国際エネルギー機関)のNZEシナリオ、IEAのSDSシナリオ)
【4℃以上シナリオ】
パリ協定に則して定められた約束草案などの各国政策(新政策)が実施されるも、今世紀末までの世界の平均気温が産業革命以前と比べて4℃以上上昇する。低炭素・脱炭素化は推進されず、異常気象災害の激甚化と頻発化による重大な物理的被害が顕著になるシナリオ(IEAのSTEPSシナリオ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ)



2.主な「リスク」と「機会」

シナリオ分析から想定される気候変動から受ける事業や経営上の「リスク」と「機会」を以下の通り整理しました。



分析期間:2050年カーボンニュートラルの実現を目標とした期間を設定
影響を及ぼす時期:短期(3年以内)・中期(3年超~10年以内)・長期(10年超)
影響度の程度:大(事業が大幅に縮小・拡大する程度の影響がある)・中(事業活動の一部に影響がある)・小(ほとんど事業への影響がない)

指標と目標

私たち人・夢・技術グループは、建設コンサルタントを主要な事業としており、インフラの調査、設計、維持管理、また、まちづくりやPPP・PFI事業などを通じてインフラ整備に深く関わっています。さらに、長期経営ビジョン2030において、新たなコンサルタント像として、コンサルティングエンジニアリングファーム、インフラサービスプロバイダー、また、イノベータとしての役割を目指しています。
国内の温室効果ガス排出量の概ね2/3がインフラに関連するものと言われる中、当社グループは2050年カーボンニュートラルの実現に向けた当社グループの責任を再認識するとともに、気候変動問題への対応を当社の持続的な成長における重要な経営課題として捉えています。
当社グループは2030年に向けて自社の温室効果ガス35%削減に取り組むとともに、①「インフラのコンサルティングサービスを通じたCO2削減への貢献」②「事業者として再生可能エネルギーの供給拡大への貢献」③「カーボンニュートラルな社会づくりに必要な新たなインフラ技術の開発」を通じて、2050年の社会全体カーボンニュートラルの実現に貢献して参ります。




1.人・夢・技術グループ 温室効果ガス排出量削減目標



Scope1:自社におけるガソリン等の燃料使用による直接排出
Scope2:自社が購入・使用した電力、熱、蒸気などのエネルギー起源の間接排出
Scope3:その他の間接的な排出




2.カーボンニュートラルに向けたロードマップ



Scope1:自社におけるガソリン等の燃料使用による直接排出
Scope2:自社が購入・使用した電力、熱、蒸気などのエネルギー起源の間接排出
Scope3:その他の間接的な排出


※2023年9月期より、Scope2についてより精度の高い温室効果ガス排出量算定方法に変更したため、2022年9月期を遡及して再計算いたしました。
 2022年9月期温室効果ガス排出量(Scope1+2)  [修正前] 2,800t-CO2 → [修正後] 2,378t-CO2  (2024年10月修正)





3.『社会全体へのカーボンニュートラル』への貢献に対する人・夢・技術グループの取り組み事例


インフラのコンサルティングサービスを通じたCO2削減への貢献

日本の温室効果ガス排出量の2/3がインフラ分野に関するものと言われています。当社グループは、これまでに培ったインフラやまちづくりに関する技術やノウハウを活かして、様々な分野におけるコンサルティングサービスを通じて温室効果ガス排出量の削減に貢献して参ります。

■道路・橋梁・鉄道分野
温室効果ガス排出量の16%が道路に起因するものであり、その多くが自動車から排出されるCO2です。
当社グループは、自動車から排出されるCO2を最小化するため、道路計画や渋滞対策に加えて、ラウンドアバウトなどの低環境負荷の交通処理方法やBRTなどの新たな交通モードの導入検討を行います。また、道路や鉄道の建設や維持管理による温室効果ガスの排出量を最小化するため、建設材料の最小化、道路・トンネル内照明のLED化や太陽光発電の導入を行います。また、点検ロボットの利用や遠隔での道路監視システムの整備等により、気候変動や異常気象に対応した道路維持管理の自動化を推進します。







■まちづくり・建築・PPP/PFI分野
当社グループは、スマートシティやデジタル田園都市国家構想におけるまちづくりの計画立案等を支援します。また、大学、図書館、スポーツ施設、給食センターなどのまちづくりの中心的な施設に関する建築設計やPFIアドバイザリー業務におけるZEB対応を推進します。また、オンデマンド交通サービスの実績を活かして、地域生活におけるラストワンマイルの移動支援を行うなど、多様な技術とサービスで温室効果ガス排出量の少ないまちづくりの実現に貢献して参ります。


 

 



■自治体や民間企業に対するコンサルティングサービス分野
当社グループは、これまでに培った環境負荷の小さいまちづくりに関するコンサルティングサービスを通じて、2050年カーボンニュートラルを目指す自治体に対して、カーボンニュートラルに向けた将来ビジョン、CO2排出量の削減目標、具体的な削減策や再生可能エネルギー導入計画等の策定支援を行います。また、民間企業に対してはカーボンニュートラル計画に関する調査、計画立案、情報開示等の支援、再生可能エネルギー事業者に対しては案件形成の支援(関係手続や資金調達)や技術サービス(調査・設計や維持管理)の提供を行い、社会から排出されるCO2削減に貢献して参ります。



■港湾・河川分野
当社グループは、脱炭素化に配慮したカーボンニュートラルポート(CNP)の整備に向けた港湾施設に関する調査及び設計のほか、ブルーカーボン注1)生態系を創出する防波堤や人工干潟、人工漁礁など、自然調和型の港湾構造物等の調査・設計等を通じて、港湾分野におけるカーボンニュートラルに貢献して参ります。また、また、近年増加する豪雨災害等に対して、河川や砂防ダム等の整備を通じた防災・減災対策や災害発生時の緊急対応や復旧対応等での貢献に努めて参ります。

注1)ブルーカーボンとは藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素のことで、 2009年10月に国連環境計画(UNEP)の報告書において吸収源対策の新しい選択肢として提示されたもの。ブルーカーボンを隔離・貯留する海洋生態系として、海草藻場、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林が挙げられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれる




事業者として再生可能エネルギーの供給拡大への貢献

第6次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギー比率を現在(2021年)の約20.3%から2030年までに36~38%に向上させることを目標としています。
当社グループは、自ら再生可能エネルギー事業者として、国内外における小水力発電、風力発電、バイオマス発電、太陽光発電など様々な再生可能エネルギー案件の開発と発電事業を通じた電力供給を行うことで、 2050年カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー普及率の向上に貢献します。2030年までに5~10万t-CO2相当の再生可能エネルギーの供給に事業者として参画して参ります。
また、地元企業や自治体と連携して再生可能エネルギーを組成することで、地域の非常電源としての活用や事業を通じた新たな雇用の創出など、持続可能な地産地消の地域づくりにおいても重要な役割も果たして参ります。





カーボンニュートラルな社会づくりに必要な新たなインフラ技術の開発


現在のインフラ技術だけでは、2050年のカーボンニュートラルを実現することは困難です。
当社グループは、これまで培ったインフラ技術やノウハウをベースに、新たなインフラ技術やサービスを開発・導入することで、2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献して参ります。
当社グループは、クオンタムシティ構想のもと、量子コンピュータを活用した温室効果ガス排出量の少ないインフラ技術の開発に取り組んでいきます。2020年には量子コンピュータを活用した配電網の最適化計算の特許を取得しており、今後は電力ロスの低減や多様化する電力源に対応するスマートグリッド注2)の実現を目指します。さらに、電力×交通等の分野横断的な全体最適化を図ることで、都市全体の温室効果ガス排出量の削減に貢献して参ります。
また、交通・モビリティの分野では、自動運転技術の実用化などの既存の交通モードの技術革新に加えて、空飛ぶクルマなどの新しい交通モードの導入による環境負荷の小さい交通体系の実現に取り組んでいきます。当社グループがこれまでに培った道路交通管理の技術をベースに、空飛ぶクルマなどの新しい交通モードに必要な設計指針、制度設計、運航管理等の面でその実現に貢献して参ります。

注2)スマートグリッドとは、情報通信技術(ICT)を活用した次世代の電力ネットワークのこと



 

 


取り組みの進捗とリスクの管理

サステナビリティ関連の取り組みの進捗とリスクの管理として、年2回開催される「サステナビリティ委員会」において、当社グループの気候変動対応の取り組みに関するPDCAを行います。前年度にグループ各社から排出されたCO2の算出を行いグループのCO2排出量と取り組みの進捗をモニタリングします。また、気候変動の影響による事業へのリスク・機会を再評価し、リスクの最小化に向けた対応策を検討し取り組みを推進します。「サステナビリティ委員会」は、これらの取り組み内容や進捗状況と、重大なリスクであると特定した事項については取締役会へ報告します。
取締役会は、気候変動に関するリスクの管理状況や対応策などを評価・監督します。